ジャンボ選手は、プロレスラーのかたわら、筑波大学体育研究科コーチ学専攻に入学し、「スポーツ産業論」「レジャー論」などを学んでいらっしゃいました。
そして非常に内容の濃い修士論文を書かれました。
ジャンボ鶴田選手のWebサイトで、現在も読むことができます。
自伝的な内容も興味深いですし、なんといってもコーチ学の視点から、自身の試合を分析しているという観点が面白い論文で、プロレスの読み物としても十分楽しめます。
トレーニングについては、「自然の日常生活の流れの中でつけた筋肉が理想である」という見解は、私のトレーニング論と偶然一致していて、驚きました。
ジャンボ選手は非常にクレバーである、というのはプロレスファンの周知の事実ですが、ここまですごい分析をしていたのか、とうなずける文章が、
「古代ギリシアの彫刻、絵、壺から現代プロレスのジャンボ鶴田の技の分析」です。
ギリシアの彫刻から、その彫刻で表現されている技が効いているかどうかを分析するという試みは、クレバーなレスラーであるジャンボ選手以外には書けないのではないかと思います。
長いですが、一気に読みふけってしまうかもしれません。
プロレスファンなら、本当に面白く読めると思います。
この論文のおかげで、プロレスファンの心の中に、コーナーのセカンドロープに上って「オー!」を連呼しているジャンボ選手の雄姿をいつでも蘇らせることができるのです。
ジャンピングニーと同じく、猪木さんや藤波選手と同じようにロープに相手をふってカウンターで取る場合もありますが、相手の背後からガバッと極めるスリーパーは、鬼気迫るものがありました。
この技には、逸話があります。ジャンボ選手に、ある事件が起こりました。
三沢光晴選手(現プロレスリングノア社長)から、フェースロックでギブアップを奪われてしまったのです。三沢選手にとっては完璧なジャンボ越え、今までギブアップしたことがないジャンボ選手にとっては、屈辱的な大事件でした。
このフェースロック事件の後、ジャンボ選手が使い始めた技が、鬼気迫るスリーパーホールドなのです。
あんなに迫力のあるスリーパーは見たことがありません。
三沢選手との三冠戦では、かなり使われていて、あわやレフリーストップかと思われた試合が幾度もありました。
新日本プロレスの飯塚選手のスリーパーも必殺率が高いですが、凄みという点で、試合を見ているファンを必殺したのはジャンボ選手でした。
相手の腕を自分の首にからめ、相手の腰を自分の両腕でがっちりホールドし、自分のへその上に相手をのせる感じで後方への見事なブリッジによって、相手を脳天からマットに叩きつける、テーズ流へそ投げバックドロップ。
この技の最高の使い手は、ジャンボ鶴田選手です。バックドロップを使う選手は多いですが、ジャンボ鶴田選手のバックドロップは、技のキレ、美しさ、インパクトのどれを取っても他の選手の追随を許しません。最強のプロレス技をひとつ選べと言われたら、非常に難しいですが、この技を挙げるかもしれません。
ちなみに、バックドロップをしてそのままホールドするという、バックドロップホールドという技は、ジャンボ鶴田選手のオリジナル技です。
「岩石落とし」とも呼ばれます。福沢ジャストミート朗アナがバックドロップのことを、あえて好んで使っていた呼び方です。
三沢選手が超世代軍のリーダーとしてエルボースマッシュを武器にかなりの実力をつけてきたころ、ジャンボ選手との三冠戦が行われました。
この試合では、エルボーとタイガードライバー、フェースロックと畳み掛けてくる三沢選手に対し、徹底的にクールに蹴って投げるジャンボ選手の応戦が、あまりに凄くて、手に汗にぎってテレビの前から一歩も動けなかった覚えがあります。
結局この試合は、ジャンボ選手のバックドロップ5連発で試合が決まりました。
この試合ほど、バックドロップがあらゆる角度で見られて、かつ衝撃が見る側に伝わった試合はないのではないかと思います。
バックドロップ。素晴らしい響きですね。
「人生はチャレンジだ!」by 鶴田友美さん